りんかい日記

"うまくやる"ための試行錯誤

2021年7月8日

転職のために、いろいろな人から話を聞いている。エージェント4人、フリー案件の紹介屋さん2人、前職の同僚、大学時代の先輩、大学時代の後輩、社会人サークルの仲間と、その同僚2名。エージェントは当たり外れあるけれど、全般的に、みんな忙しいなか時間を割いて相談に乗ってくれる。本当に感謝しかない。

昔から、自分でなにかモノを作りたいという思いが強く、だから初職のレポート書きの仕事は性に合っていた。自分がやりたい、だけの提案はびっくりするほど評価されなくて、相手に寄り添った企画や資料は、すんなり受け入れられていくのは新鮮な驚きだった。クライアントに提供したサービスのなかで、一番評価されたのはオペレーションの推進でもなく、リサーチでもなく、悩みに寄り添った論点整理と方向性の示唆だった。とにかく、相手がこんなこと求めてるだろうな、というのは、話しているとなんとなくわかるから、そこに徹底的に寄り添えば、仕事は大抵なんとかなった。時折、これでいいのかな、という自分の気持ちはむくむくと湧き起こり、相手から離れた提案をすると、大体ボヤが起きた。

当時はクライアントワークを自分のなかでうまく位置付けることができず、もっとわかりやすい"サービス"を作りたいと思うようになり、現職のベンチャー企業に移った。けれど、現場があり、現物がある商売で、一人でできることなんてほとんどなくて、いつでもどこでも、他の部門との調整・連携・協業が不可欠だった。一人でなんでもやろうとして、企画も、社内調整も、アライアンス先の選定も、外注管理も、トラブル対応も、何もかも自分で担おうとした。立ち上げすぐはそれでも良かったけれど、すぐに行き詰まったし、なにより、結局他部門との軋轢を引き起こした。ただ、当時の僕は、他部門と一緒にやるということが、よく分からなかった。 そういうしているうちに自分に割り振られた権限がどんどん縮小して、一介のスタッフとして関与できる範囲が限定されていった。ただただ、課題抽出と改善提案だけをする人になった。最初は、そんな状況に腐りきって、開き直って、自分はここまで、あとはあなた、とバッサリ仕事を整理していった。どうせ傭兵なんだ、契約の範囲で仕事をしますよ、と拗ねていたのだ。なのに、他部門との軋轢も無くなったし、評価される機会も増えた。誰も、僕に出荷現場で発泡箱を洗うことを求めていなかったし、築地で代品調達をしてドコモバイクで運ぶことを求めていなかった。ただ、定例MTGでシナリオを書いてガイドしてあげるだけで良かった。これも新鮮な驚きだった。拗ねる態度は良いとは思わないが、4年間の模索を経て、自分の人格と仕事を分離することができて、分のある範囲で業務をすることの腹落ちがした。

信長の野望というゲームの実況動画を大量に見ている時期があった。プレイヤーは企画だけして、実行はゲーム中の大名にやらせる。プレイヤーはひたすら、彼らに何をさせるかだけを考える。街も、人も、食料も、武器も、等しくリソースとして扱う視点に立ってものを見たことがなかったから、これも強い影響を与えた。そうか、リソースの調達と割り当てと再配置をひたすら行うこともまた、一つの職掌なのだなと知った。

転職しようと思ったのは、僕にリソース運用の仕事は回ってこないと思ったからだった。ものを作るだけなら一人でやれば良い。組織で働くならば、企画と運用の仕事をしたい。組織の中で指示に従って動くならば、傭兵なりの報酬が欲しい。良い雰囲気の会社ではあるが、業務も報酬も手に入らない会社だった。

次は3社目になる。年齢も30歳を軽く超えて、雑に生きていると人生の詰みが予感されるようになった。業務コンサルで5年ほど働いてマネージャーまで昇進すれば、そのあとスタートアップの役付きが狙えるし、チャレンジが失敗してもコンサルに戻れるし、あるいはフリーランスの口もある。リスクを抑えつつ、アップサイドを狙うなら、このあたりが手堅いのではないかと考えた。 大企業のCxOというカスタマーに対してサービスを提供する。とにかく、相手に寄り添い、ニーズに応え、時には驚きを与えつつ、、という専門職サービスを提供すれば良い。もちろん、その過程での困難はもちろんあるだろうが、所詮雇われの身分、自分に降りかかるリスクは限定的だからさほど気負わなくても良いし、生意気言うようだが、大体なんとかなる気がする。2ちゃんねる創設者のひろゆきが「世の中の仕事は高校卒業程度の難度でできるようになっている」と表現していたけれど、そう、世の中の仕事は、普通の人でもなんとかなるようになっているのだ。そうじゃないと世間が回らない。ここでは、自分のやりたいよりも、相手にどんなサービスを提供するか、をとにかく一心に考え、実行することが、うまくやっていくポイントだと、過去の自分が指摘してくる。

そこで提供するサービスが、「自分が世の中に作りたいモノ」とオーバーラップしていれば良いんだけどね。リサーチとレポートと会議事務局とPMOが渾然一体になったシロモノは、果たして自分が世に問いたいサービスなのだろうか。